新しい月の始まり

3月が始まりました。

 昨日夜、寝床で友達が残していった重松清著『流星ワゴン』を読む。
 
 主人公、永田一雄の前に一台のワゴンが止まったことからこの物語は始まっていく。このワゴンに乗る橋本さん親子は、主人公の持つ悩みや問題について何でも知っていた。
 永田の家庭は、中学受験に失敗し、引きこもり暴力を振るう息子、テレクラで知り合った男たちと浮気を重ねる妻と、家庭崩壊寸前であった。そして自身も会社をリストラされ、余命わずかな田舎の父のお見舞いに行き、そこでもらう御車代を当てにしながら生きていた。主人公は漠然と「死にたい」と言う気持ちを抱いたとき、橋本さん親子に出会い、ワゴンで「たいせつな場所」に連れて行ってもらう。
 
 物語の設定は、死者というより幽霊というべきか、橋本さんが車を運転し過去と現在を往復したり、そして、会話したり、死に際の主人公の父親が主人公と同年齢で登場したり、かなり荒唐無稽であった。
 しかしながら、読んでいてそのような無理な設定に違和感も感じず、楽しく読める作品でひさし振りに「ページをめくる快感」を感じた作品であった。
 過去を変えることはできないが、未来を変えようとすることはできる。現実を認識しながらその中で最善を尽くす。そのようなメッセージ性を感じた作品だった。

 その後プラトン『国家』を読んでたらいつの間にか朝になっていた。